新規上場のポイント
IPOを狙う会社は数多ありますが、実際に新興市場にデビューする会社は年間100社ほどしかありません。
最近は、取引所審査の厳格化及び内部統制対応があり、審査のハードルがいっそう厳しくなっています。 さらに、2008年秋の金融危機以降は、業績の落ち込みにより計画を延期したり断念したりする会社が急増しています。
多くの経営者は、業績の見通しがたち、主幹事証券会社とのコンサルティング契約あるいは監査法人との監査契約を締結したあたりで、上場を具体的に意識されるものと思います。
ところが、こうした自称“株式上場準備中”のステージにある会社が如何に多く、そして実際にそれを果たす会社が如何に少ないことか…
“準備中”の会社のうち実際に上場を果たす会社の割合は、おそらく1割にも満たないと見られます。このような結果だけ見ますと、やはり狭き門ということになりますが、果たして本当にそうなのでしょうか?


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要件について
確かに、法令に抵触している、事業に特長がない、経営者の資質や能力に重大な問題がある、経営者の公私混同が激しい、反社会勢力との関係を断てない、株主構成が修正不能、あるいは業績が良くない、といった致命的欠陥のある会社は審査を通過すべくもありません。
しかし、少なくとも主幹事証券が株式上場コンサルティング契約を締結するレベルの会社であれば、“やるべきこと”をきちんとこなせば、基本的にはやってやれないことはないはずだと考えます。
では、“やるべきこと”とは何なのか…?具体的な上場準備のタスクは膨大で且つ多岐に及びますが、端的に申し上げると、“主幹事証券の指示を粛々とこなすこと”に尽きると思われます。
上場できそうでできない会社には3つのパターンがあるようです。ひとつは致命的欠陥が表に出ていないケース、これはその欠陥を解消しない限り次のステップに進めません。
次に審査中に業績が計画を著しく下回ってしまうケース、これはコントロール不能な面もありますが、ゴールを切るまで何が何でも業績をつくる覚悟も重要です。
そして、最も目に付き且つ“もったいない”のが内部管理体制の整備が進まず風化してしまうケースであり、その原因として次のような事例が見受けられます。
○経営者の上場に向けた決意と理解が不十分
○経営者のリーダーシップが不十分
○経営者に上場に関する正確・客観的な情報が伝わらない
○全社的に上場準備・管理部門充実の必要性に対する認識が不十分
○改革・改善を受け付けない社内風土
○準備実務に耐え得る人材がいない
○上場準備責任者の社内権限が不十分、指示がとおらない
○経営戦略から末端業務まで全体を詳細に把握し説明できる人材がいない
○評論家タイプに掻き回されて進まない
○審査が厳格化している状況を受け入れられない
○上場他社も同じことをしていると主張して改めない
○客観的な視点から物事を理解し論理構成することができない
○独断専行で重大なミスを犯し取り返しがつかない
準備を始めるにあたってまず留意すべきは、証券各社の引受・審査担当者は極めて多忙であり本腰を入れて取り組むことのできる会社数は限られているという現実、及び機能上指導とチェックしかしてくれない(できない)ということです。
つまり、まず社内に準備実務をきちんとこなせる人材・体制を整えたうえで、一定のレベルまで整備を進め、「この会社なら行けるだろう」という引受部門の信頼を獲得する必要があり、これが本格的な出発点となるのです。
次に、上場の可否を決めるのは主幹事証券及び証券取引所であり、彼らはほとんど妥協しないために基本的に要求事項はすべてパスする必要があるという点にも留意する必要があります。
つまり、引受・審査担当者に逆らっても無駄であり、新興市場の審査基準が厳格化した今“お目こぼし”はあり得ず、愚図ついていると“後回し”にされてしまうということです。
また、証券会社は現場・担当者重視の色彩が濃いため、担当者個人の心象と熱意も非常に重要となります。
ご参考
○役員及び幹部職員の選任、自社株式の割当及びストック・オプションの付与等は、慎重に行うことをお勧めします。
業容の拡大と信用の向上に伴い、優秀な人材が後から入ってくる可能性が高いためです。
また、一般職員へのストック・オプション付与の効能については、長い目で見ると、疑問符がつきます。
○準備責任者の選定は、下手な人材を登用すると大きなロスになるため、実務能力本位で慎重に行うことをお勧めします。
一般的に、継続企業のトップマネジメントに求められる資質としましては、責任感、根性、ビジネスセンス、合理性、客観性、統率力、突破力、体力、コミュニケーション能力、重要性判断に係るバランス感覚、経営を俯瞰から見る力、理解力、論理構成力、プレゼンテーション能力、マネジメントスキル(経理財務/法務/総務等)等があげられると思いますが、主に経営トップと管理部門担当役員(準備責任者、CFO等)が相互補完しつつこれらを担うことになります。

さらに、準備の過程においては多くの制度を新設していく必要があり、また事務作業量も膨大であるため、準備責任者は、指示出しタイプより実務家タイプに適性があり、高い視点を持ち且つ管理部門実務を網羅的にこなせる人材が適任だと考えます。
なお、年配者、“上場会社”経験者、なんとなく関係のありそうな会社の出身者、有資格者等で、評論家タイプに見える人物は、限定的な体験に固執して障害になるケースがあるため注意が必要です。
これという適任者がいない場合は、一人に責任と権限を集中することは避けて、若年の地頭の良いスタッフを十分に配置し分業体制で乗り切る方がベターと考えます。
○準備が進むに従い、監査法人よりも主幹事証券の方が数段厳しく(うるさく)なります。信頼関係を深めるためにも、重要事項については事前に主幹事証券引受担当者に相談する習慣をつけることをお勧めします。
○株主構成修正、労務管理(就業時間管理及び残業)、取引先選定・与信管理、関連当事者取引、関係会社、契約書面整備、要員増強(経理/内部監査/監査役等)等、重要且つ解決に時間が掛かる事項は、なるべく早い時期に手を付けることをお勧めします。
○上場プロジェクトについて社内で喧伝しないことをお勧めします。一般職員にとって株式上場の直接的なメリットは少なく、スケジュールどおりに進まない場合に無用のモチベーション低下を招くおそれもあります。
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